カワゴエ・ラボ技術者指南書

サイタマの住宅街に存在するあるラボの研究資料

「Every Breath」 瀬名 秀明

システムの進化はいったいどこまで進み、人類はどこまでコンピュータやネットワークに依存するのか、と考えることはないだろうか?
電子マネーが登場し、携帯でネットを繋げば様々な情報を瞬時に手に入れることができるようになった。
このような技術の進化、進歩を否定する必要はないし、これからもIT技術は進歩していって欲しいと常々思う。
要はその生み出された技術とどう付き合っていくか、が問題であるのだ。
犬や猫にICチップを埋め込みGPSの技術を利用して管理システムがある。
もしこれが人間に応用されたらどうなるだろう?
全ての人の現在地がサーバー上に管理され、もしそれを国が管理するということになれば犯罪の防止や、もし事件が起きた場合の
犯人の特定に役立つかもしれない。
(現在だってオービスの技術により車の移動は管理されている)
しかしながら自分の位置を常に監視されている世界は、世論に認められることはないだろう。
サーバの情報が漏洩し、第三者によって悪用される可能性も否定できない。
金融や証券取引のシステム問題が多発しているのでわかるように、システムは絶対ではない。
国や大手銀行が何100億という途方もない投資を行って磐石と思えるシステムでさえ不具合は起こる。
「バグのないシステムは存在しない」、「敗れないセキュリティーは存在しない」とよく言われる。
決してやぶれないと考えられていた暗号化技術が破られたというニュースはよく聞く話だ。
どこまでシステムを信じるか、それは個人個人に与えられた問題であり、自分自身で判断しなければならない。
近い未来、人体にICチップを埋め込む時代が来るかもしれない。
そのICチップにどれほどの権限を与えるか、はたまた付けないという選択肢を選ぶか、それは自分自身の問題となろう。
 ちなみに「生命を生み出す技術」にお目にかかるのはまだ先のことになりそうだと、個人的には思う。
本作のようにネットワーク上に第2の人格を生み出し、自分の命が尽きても変わりに生きてもらうのも悪くない話だと思う。

そうしたら、是非、私の子孫(もし居ればの話だが)と生活してほしいと思う。